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『OCTOPUS STORY』の制作プロセスについて ③

昨年(2020年)8月に今回のメインメンバー(合田、野村、青木)と京都(アバンギルド)で『FEAR』という共創作品の中間発表、公開クリエイションを行った。「恐怖」の断片を収集し、象徴化、物質化した作品の展示と、6時間に及ぶダンスパフォーマンスを行った。 今回の作品はその中間発表からの流れに位置づけることができる。1部完結と言ってもいい。

私たちにとって初回のクリエイションだった前回のテーマは「恐怖」だ。私たちに通底する問題意識は今回も変わらない。作品制作の手法も同じなので、作品理解の一助となればと思い、まずは前作の制作プロセス説明について、そのまま再掲する。

『FEAR』制作プロセス

ここ3ヶ月(2020年5,6,7月)ほど、コロナ真っ最中ではあったが隙をみてクリエイションしてきたプロジェクトの中間発表・公開クリエイションを8月29日にアバンギルド(京都)ですることにした。

「恐怖」をモチーフとしたプロジェクトである。

昨年末、デンマークから滞在制作の話が来たので、ダンサーの合田有紀と野村香子を誘ってプロジェクトを立ち上げた。

滞在制作の話が来る以前に合田、野村がドイツで「恐怖」をテーマにダンス作品を制作したとの話を聞いていたので、僕自身もちょうどそんなことを考えていたし、恐怖というテーマに乗っかることにした。

文化人類学者の青木敬にも参加してもらい、2020年秋ごろに現地に赴くつもりでプロジェクトを進めていたのだが、コロナの影響もあり断念せざるを得なくなった。

時間がたつにつれて日本国内もかなり特殊な状況下に変化していったが、少しずつクリエイションを進めた。

当初考えていたプロセスとしては、日々、恐怖の「断片」を様々な場所・方法(野外でのパフォーマンス、音声録音、写真、映像、インタビュー、 ドローイング、物の収集、調理など)で収集し、それらの断片を新たな恐怖を創出する素材とし、断片の収集後、収集のプロセスで得た「体験」を共有したメンバー全員が身体的、 視覚的に即興で表現、手法は問わないがその日感じた身体的反応、精神的反応に集中し、恐怖を纏った身体から出てきた「動き」に着目する、そしてこのワークをルーティン化することで、表層的な恐怖と、深層的な恐怖を視覚化し集積する。というものだったが、状況が状況だったので、恐怖の収集方法は「インタビュー映像撮影」に絞ることにした。

ダンサーが対象者に恐怖についての質問をなげかけ、答えを受け取る。その体験を身体に定着させ、インタビュー後に即興でダンス表現するということを繰り返した。ダンサーはカメラの機能を担っていたとも言える。

これまでに計21人の方にインタビューすることができた。 そして最終的に、ダンサーはすべてのインタビュー映像を見返し、その中から再度受け取った情報を視覚化、物質化することによって象徴化を試みた。それらが会場に展示され、その空間のなかで新たな身体表現を試みる。インタビュー映像も公開される。

「あなたにとっての恐怖とはなんですか」

様々な答えを収集することができた。

私たちプロジェクトメンバーがやろうとしていることは、答えのない問いなのかもしれない。 しかし、不可解なものこそ、恐怖の対象となり得る。それは人間史において繰り返されてきたことである。「理解できないもの」を理解しようとしないこと、価値観を押し付けること、排除する行為はとても危険ではないだろうか。つまりそれらの行為は人を殺すということと同義だということだ。

理解できない他者を知ろうとする行為は、地球のどこにいようが、人が存在する限り、死ぬまで 続けなくてはならないと私たちは考えている。表面に見えているものだけが全てではない。クリエイションを通してそれを掘り下げ、疑うことによって、「私たち」(が作る世界)をより理解でき るのではないだろうか。私たちは「違い」を強みとできる社会を構築する日が訪れることを信じ たい。時に理想は現実を裏切るかもしれないが、今回のクリエイションは、その一歩を踏み出すた めの極めて重要なステップであると確信している。今回得た経験と結果をもとに世界各国でさらなるステップを踏み、「私たち」が共創することで得 る「新たな恐怖」と「選択肢」を、最終的には再び日本に持ち帰り、同様のプロジェクトを実施した いと考えている。

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